真理の種類
まず、どういったものが真理と見做されるのかwikiを引いてみると、説がいくつかありました。雑にまとめてみると、以下のようになります。
対応説:その場で起こるある事象が言語にできていれば
整合説:他の信念や命題の真偽と矛盾しなければ
明証説:確か(デカルトの言う4つの規則を満たしていれば)なら
実用説:実用的なら
合意説:社会的な合意があれば
定義不可能説:真理を命題にするなど、無限に疑えるため
真理の余剰説:命題の真偽は問えても真理と言うには大きすぎる
規約主義:言語依存
還元主義:道徳判断
このように、真理はひとつではなく、「どの世界を扱うか」で性質が変わることが分かります。
ここで、明証説における4つの規則とは方法序説における以下を指します。
1,明証性の規則(はっきり確実なもの以外は信じるな)
・直観的に“絶対に確実”だと認められないものは 真実として扱わない
・ぼんやりした理解・曖昧な前提・人から聞いただけの話も全部NG
2,分析の規則(問題を分解せよ)
・難しい問題をいきなり理解しようとしない
・小さな要素に分割していく。
例:
「意識とは何か?」
→ 記憶・注意・主観・脳の構造・クオリアなどに分割して考える
3,総合の規則(分解したものを順序立てて再構築)
・分解された問題において、小さな問題(真理)から大きな問題(真理)を作る
例:
「意識」を理解するために
① 神経活動
② 情報処理
③ 主観
のように、ステップにして再構築する
4,枚挙の規則(漏れがないか全体をチェック)
・偏見を排除し、全ての論理をチェックする。
世界は「三つのレイヤー」で動いている
社会学者のニクラス・ルーマンの理論などに基づくと、
この世界は次の三層で理解できる、と整理されます。
1. 物理的世界(自然)
対応説(現実・事実と命題が一致していること)が通用する
例)物理法則・生物学・観測可能な事実
2. 心理的世界(心)
整合説(信念体系が内部矛盾なく整合していること)が働く
例)感情・思考・信念の体系
3. 社会的世界(制度・文化)
合意説(コミュニティ・社会・集団が合意したもの)が支配する
例)ルール・価値観・慣習・法律
社会的世界の真理は「構造」によって維持される
ここからは社会の話に入ります。
社会は単なる人間の集まりではなく、構造とシステムによって維持される巨大なネットワークと見るのが現代社会学の主流となっています。
アメリカの社会学者タルコット・パーソンズは、社会を支える4つの機能をAGIL図式として表しました。
A:適応(経済)
G:目的達成(政治)
I:統合(法律)
L:パターン維持(文化・宗教・教育)
これらが複雑に相互作用することで、社会は“自然と続いていく”仕組みを持っています。
つまり、社会的世界における真理は「発見するもの」ではなく、システムとして維持し続けているものと言えます。
言語は世界そのものを形づくる
構造主義・ポスト構造主義が明らかにしたのは、
私たちは言語を通して世界を知覚している。
言語が変われば、世界の見え方も変わる。
という事実でした。
「世界に意味がある」のではなく、
世界に意味を与えているのは言語である
という視点です。
SNS上の「炎上」や「価値観の対立」も、
言語ゲームの衝突といえます。
道徳や正義は「感情」から生まれる
心理的世界に視点を移すと、真理とは「理性ではなく感情」だという理論が強くなります。
メタ倫理学の有名な議論では、以下のような主義があります。
情緒主義:道徳判断は感情の表現
規範表出主義:善悪は規範を受け入れているという表明
また、ヒュームは「理性は感情の奴隷である」とも述べています。
つまり、
人が「これは正しい」と感じる理由の多くは、
論理ではなく心理的・情緒的な反応である。
また、社会問題・道徳・炎上などの現象でさえ、
構造 × 言語 × 情緒の三点セットで動いている
と言うことができます。
まとめ
各世界における真理は以下のように言うことができます。
物理の真理:観測と一致すること(対応説)
心の真理:自分の信念体系と整合していること(整合説)
社会の真理:多くの人が合意し、システムが支えていること(合意説)
つまり、真理とは以下のように言うことができます。
世界ごとに異なる“正しさの条件”の集合であり、
社会においては構造と情緒によって支えられるフィクションである。
私たちが「これは真実だ」と信じているものは、自然・心・社会がそれぞれの方法でつくり出した複数の真理の重ね合わせに過ぎないのです。
参考文献
世界論と真理観の相対主義 https://mercamun.exblog.jp/9956205/


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